13 雪肌

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ロッカーで私服に着替えているとメールの着信があった。 『仕事終わりましたか?本社の者が来ているので、迎えに行きたかったのですが無理そうです。気をつけて来て下さい。』 そういう事なら仕事の邪魔はしたくないと思い返信をする。 『お仕事でしたら、メガネは明日取りに伺います。』 エレベーターを待っていると今度は電話の着信。 もう打ち合わせは終わるので、気にしないで寄ってほしい、と想さんの言葉を受けて、 私は今、ルックメガネの自動ドアの少し手前で、 立ち止まっていた。 お店はシャッターが半分だけ閉められていで、入り口がある方の半分は、ガラス越しに、明るい店内の様子がよく見える。 そして目に映ったのは、長い脚を組んで椅子に座った想さんと、そのすぐ側に立っている女性が話している姿。 と言っても、近視と乱視の混じったこの目では表情までははっきり見えないのだけれど、多分笑っていて、雰囲気が良くて。 …入れない。 本社の人って、何故か男性だと思い込んでた。 いや、別に女性だって同じで、普通に「こんばんは」って入っていけば良いんだけれど。 一瞬の逡巡。 胸の辺りがなんだか…痛い。 胸もぶつけたっけ? ・
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