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…想ちゃん、か。
うん、何となく、ただの仕事上の関係より近い間柄なのかな、とは思った。
想さんの感情が見えたから。
想さんは、よほどの事がない限り周りの人には穏やかに接してる。
こんな風に苛立ちを見せたりしない。
それは多分私にも。
…胸がまたチリリと痛い。
だけど、足立さんが続けた言葉に、私はまた違う衝撃を受けた。
「お客様との恋愛は駄目だって、揉め事は困るって、社長に言われてるんでしょう?」
「聖良。」
「なのに、名前で呼び合ったり、そんな優しく…、おかしいじゃない。」
足立さんは涙目になっている。
想さんは、狼狽えた表情で、足立さんではなく私を見ていた。
…私は確かにルックメガネのお客様、だ。
想さんは、私が好きだって…言ってくれたけど、
それって、大丈夫、なの?
私の思った事が分かったのか、困ったように微笑む想さん。
「鈴さん、聖良の言うことは気にしないで下さい。」
「え、でも…」
「ホントの事でしょ?」
「…聖良。」
「想ちゃんっ。」
想さんは小さくため息をついた。
「聖良はここで待っていて。」
足立さんにそう言って、想さんは私の手を取ると店から出て、マンションの階段に向かった。
「あの、想さん。私、帰りますから…。」
「…駄目ですよ。」
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