13 雪肌

16/23
前へ
/335ページ
次へ
…想ちゃん、か。 うん、何となく、ただの仕事上の関係より近い間柄なのかな、とは思った。 想さんの感情が見えたから。 想さんは、よほどの事がない限り周りの人には穏やかに接してる。 こんな風に苛立ちを見せたりしない。 それは多分私にも。 …胸がまたチリリと痛い。 だけど、足立さんが続けた言葉に、私はまた違う衝撃を受けた。 「お客様との恋愛は駄目だって、揉め事は困るって、社長に言われてるんでしょう?」 「聖良。」 「なのに、名前で呼び合ったり、そんな優しく…、おかしいじゃない。」 足立さんは涙目になっている。 想さんは、狼狽えた表情で、足立さんではなく私を見ていた。 …私は確かにルックメガネのお客様、だ。 想さんは、私が好きだって…言ってくれたけど、 それって、大丈夫、なの? 私の思った事が分かったのか、困ったように微笑む想さん。 「鈴さん、聖良の言うことは気にしないで下さい。」 「え、でも…」 「ホントの事でしょ?」 「…聖良。」 「想ちゃんっ。」 想さんは小さくため息をついた。 「聖良はここで待っていて。」 足立さんにそう言って、想さんは私の手を取ると店から出て、マンションの階段に向かった。 「あの、想さん。私、帰りますから…。」 「…駄目ですよ。」 ・
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1646人が本棚に入れています
本棚に追加