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手を引かれたまま階段を上がる。
想さんの部屋に入って靴を脱ぐ間も、ソファに座らされて目を覗き込まれるまで、手は離されなかった。
「待っていて下さいね。」
すぐ部屋も暖かくなるからと、私の膝にブランケットを掛けて、想さんは部屋を出て行った。
カチャンと鍵が掛けられる音が小さく響いて。
軽く監禁されたみたい、なんて思って、なんだか可笑しくなる。
エアコンの静かな音がする部屋の空気はまだ冷たくてかなり寒いけれど、気持ちを落ち着かせるには丁度良いと思った。
…はぁ
正直いうと、すごく疲れてしまった。
ただ単にああいう状況に。
今まで経験もないし。
足立さんの「好き」という気持ちは目に見えるようで、焦りみたいな、ざわざわするような感覚が押し寄せてくる。
私と想さんの距離はどれくらいなんだろう。
すごく近付いたと思ってたのに、実はそうでもないのかもしれない。
メガネを受け取り損ねたからぼんやりと見える室内が、どんどん滲んできて。
…もう泣き顔見せたくないから想さんが戻るまでに止めなくちゃ。
目を閉じて両手で顔を覆う。
どうして痛いのかな?胸、こんなに。
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