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「…はい。」
肯く私の耳元で「ありがとう」と囁いた想さんは、私の体をそっと胸から離して顔を覗き込んだ。
私が顔を上げると、ちょっと残念そうな笑顔の想さん。
「でも、実は明後日から本社での会議や、何日かまた出張があるので…、次に会えるのは2月に入ってからになってしまいそうなんです。」
「もう、忙しくなってるんですね。」
「ええ…もう少し余裕があるかと思っていたのですが…。すみません、また連絡しますので。」
「はい、大丈夫です。無理しないで下さいね。」
暫く会えないんだ…と寂しく思いながらもそう言うと、
「僕は大丈夫じゃないんですけれど…」
と真面目な顔で返されてまた顔が赤くなる。
それから、直して貰ったメガネを忘れずに受け取り、途中で夕食を取って想さんの車でアパートまで送って貰った時にはもう11時を過ぎていた。
「ありがとうございました。」
「いいえ。遅くなってしまって。…鈴さん、」
「…はい。」
「…いえ。…また、連絡します。おやすみなさい。」
「はい。…おやすみなさい。」
この時の私は、まだ帰りたくないと、まだ想さんと一緒にいたいと、思っていて。
もう次に会う時の返事も決まっていて。
これからはこの気持ちは想さんだけに向かうのだと、思っていた。
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