2 その日

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「ごめんね、菜々子ちゃん。」 「いえいえ、大丈夫です。…ってか、主任!いつの間にあんな素敵な人と知り合ったんですか?」 菜々子ちゃんはまだ少し興奮状態みたいで頬が赤い。 「一年位前かな。」 ルックの店員さんが一人辞めて、想さんが他の店舗から移って来たのが去年の今頃だったと思う。 「あの、藤野さんてハーフですか?」 「ううん、クォーターらしいけど。」 興味深々の菜々子ちゃんだったけれど、課長がこちらに近付いてきたので開きかけた口を噤む。 「田上さん。」 「はい。」 うろたえてしまいそうな気持ちをぐっと抑えて課長の顔を見る。 やっぱり課長にとっては何でもなかったんだな、と思うその表情。 そうか…良かった。 ちょっとドキドキした私、馬鹿みたい。 そんな自分に思わずクスッと漏れた笑い。 「ん、何だ?」 「あ、いえ。何か?」 一瞬怪訝な顔をした課長だったが、すっと腕時計に視線を落とした。 「田上さん、今日は6時上がりだったね。」 「はい。そうですけど。」 え、もしかして何かあって無理とか? 「代わりに売場に出るから、上がったら声かけて。事務所にいるから。」 「……」 ・
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