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私と菜々子ちゃんはどちらともなく目を見合わせた。
それを見て課長が気まずそうな顔になる。
「…俺じゃ、あまり役に立たないとは思うけど」
その言葉に慌てた菜々子ちゃんが急いで口を開く。
「違いますよっ、課長!そうじゃなくて、課長がそんな風にシフトに気を使ってくれて、ちょっとびっくりしたんです。ねっ、主任。」
私も笑って頷いた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
「あ、いや。今日は時間があったからで、いつも出来るわけじゃないから、そう言われるとまた困るんだけど…」
少しホッとしたように、でも困った口調で言う課長。
「私たちのシフトは主任が気を遣ってくれてますけど、主任はなかなか帰れない事が多いんです。」
「…そうでもないわよ?」
「そんなことないですよ。」
そんなやり取りを見ていた課長は「そうか」と呟くと
「とにかく今日はそういうことで。」
と言い置いて紳士服売場の方へ歩いていった。
「何だかいい人そうですね?貝塚課長。」
「そうね、多分、真面目なのかな。お言葉に甘えて今日は早めに帰るね。」
「はい。メガネ屋さんに行くって、藤野さんの所ですか。」
「うん。」
「今度ゆっくり話聞かせてくださいね。」
お客様が売場に入ってきたのを見て、菜々子ちゃんが小声で囁いた。
「そういえば北島さんも藤野さんの事聞いてきましたよ、あれ誰だ?って。」
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