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「へぇ、やっぱり男の人から見ても想さんは目を引くんだね。」
そう言う私に何故か小さくため息をつく菜々子ちゃん。
「そういう事じゃ無いと思うんですけど…。」
「すみません~」
その時男児服売場から声が掛かり、私はレジ番を菜々子ちゃんに任せて小走りでお客様の方へと急いだ。
「それじゃ、お先にね。後はよろしくです。」
結局6時を少し過ぎて、品出しの引き継ぎなどを終えた私は売場を離れて事務所へと向かった。
「お疲れ様でした。」
同じ様に早上がりで帰って行く紳士服売場の社員と入れ違いに事務所に入っていく。
午後の休憩時間は過ぎていたので、休憩室には誰もいない。
奥の事務所を覗くと、貝塚課長は売り出しチラシのゲラ刷りを広げて見ていた。
立ったまま顎に手を添えて視線を落とし、何か考えているような姿を少しだけ眺めてしまう。
「…課長。」
声を掛けるとこちらを向いて「あ、終わった?」と言うと、ガサガサとチラシを畳む。
「すみません。お言葉に甘えて帰らせていただきます。」
「はい。わかりました。」
ロッカーから私物を取り出していると、事務所から出てきた課長がふと足を止めて私の方を見た。
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