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「彼女さんなんですか?」
…へ?
「ち、違い…」
違いますよ、と言い切らない内に、グイッと想さんの手が私の腕を掴んで自分の隣に引き寄せた。
思わず見上げると、にっこりと笑った想さん。
「…大事な人です。」
…はぁ…
そりゃあね、一言も、彼女だとか付き合ってるとかは言ってないし。
ルックメガネの、大事な、お客様なんだとは思うけど。
その台詞はすっごく語弊があると思う。
…酔った想さんは、ホントに、困る。
「ごめんなさい、鈴さん。」
「知りませんよっ。私は見知らぬ敵なんて作りたくないんですから。」
想さんの笑顔と返事に固まっていた女の子たちに、「違うから。彼女でも何でもないからね。」とキチンと訂正した私は即座にその場を後にした。
ずんずんと早足で歩く私を想さんの声が追いかけてくる。
ごめんさない、と言いながら、面白がってるようなその声のトーン。
会計を終えてその様子を見ていた店長と笙子も追いついてきた。
「まあまあ、鈴ちゃん。そう怒らないでよ。想も最近困っててさ。」
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