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私はため息を吐くと歩くスピードを落とした。
想さんが横に並ぶ。
すぐ後ろに店長と笙子。
「…でも、私なん…、私じゃあ、想さんには釣り合いませんよ。」
「……」
「彼女に見えたから聞いてきたんじゃないの?」
想さんが何か言おうとしたようだったが、笙子が後ろから顔を出すようにそんな事を言ってくる。
「でも、実際違うんだから、誤解されるのは…嫌。」
「……ごめんさない、僕が調子に乗り過ぎました。でも、鈴さんは本当に大事な人だと思ってますから。」
「えっと…どんな意味でも嬉しいです。それに、想さんも私にとって大事な人で…感謝してます。」
想さんが驚いた顔で私を見下ろす。
「感謝…ですか?」
「はい、いろいろと…。」
想さんはきっと自分では分かってないと思うけど。
その後は何となく黙って歩いてルックメガネの前に着いた。
ルックメガネが入っているビルは二・三階部分が賃貸マンションになっていて、想さんは二階の一室を借りている。
店長も以前はここに住んでいたけれど、結婚を機に郊外に一戸建てを購入した。
「ローンもあるけどふたりで頑張るわ」って笑った笙子は幸せそうで、それは今も変わらない。
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