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「さて、じゃあ帰ろうか。明日も仕事だし。」
かなり眠そうな声の店長は、笙子に「悪いな、運転。」 と声を掛ける。
「ん、大丈夫よ。鈴も乗って。」
ルックメガネの駐車場にポツンと一台停まっている笙子の可愛いコンパクトカー。
想さんは車が出られるように駐車場の入り口のチェーンを外してくれていた。
「じゃ、想。後頼むな。」
「はい、お疲れ様でした。おやすみなさい。」
ごめん、後ろで寝ていくよ、と言いながら、店長は後部座席に乗り込んでいく。
私と笙子も想さんに「おやすみなさい。」と声をかける。
「はい、おやすみなさい。笙子さん、運転気をつけて。…鈴さん、また。」
さっきの事を気にしているのか、躊躇いがちに言う想さん。
その顔に陰を作るのは斜め上からの街灯の明かり。
「おやすみなさい。想さん、また…。」
幾らメガネが好きでお得意様だからって、そんなにしょっちゅう店に寄る訳もなく。
だからこの「また」は、いつになるか分からない、「また」。
いつになるかは分からないけど、その「また」はなんとなく必ずあって。
それが出逢ってからのこの一年の、想さんと私の、ルックメガネありきの関係だ。
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