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「メガネ、かけてたから最初は分からなかったよ。」
閉店後、誘われた食事の席で川口先輩は言った。
そうだよね、私がメガネをかけたのは、先輩が卒業してからだから…。
近況など話しながら過ぎる時間は夢の様だけど私の頭の中は疑問符ばかり。
何故覚えてたの?
何故また来てくれたの?
何故誘ってくれたの?
その後も映画や食事に誘われて、四回目に訪れた先輩の部屋でその答えを知った。
「時々、ふと思ってた。あの子はどうしてるかなって。…図書室での事、覚えてる?」
頷く私。
「俺も覚えてたよ。…じっと俺を見た、その目を。」
ああ、やっぱりあの時目が合っていたんだな、と思う。
「…知ってたよ、君の気持ち。ペンケースに気付いて…取りに戻るかもって、わざとあんな事したんだ。あの時は彼女がいたから諦めて貰おうなんて…馬鹿な事した。」
先輩は自嘲するように口の端を上げた。
「次の日から、俺の事見なくなったよね。」
ソファに並んで座っていた先輩が私の肩に手をかけ自分の方に向けた。
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