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「…ムカツク」
笙子が絞り出す様な声で言った。
「…鈴と別れて、すぐって事?」
「…笙子。」
私の為に怒って泣いてくれる友達を抱きしめた。
「ありがと…。でも大丈夫だよ。」
「鈴…。」
「奥さん、優しそうな人だったね。」
すれ違いながらしっかり見てた自分が可笑しい。
少しふっくらとした、二重の可愛らしい目をした人だった。
「先輩、穏やかな顔してた。…だから、いいんだよ。」
「…鈴のバカ。」
強がりだって事は私も分かってる。
好きだとかそんな気持ちはもう無いけど、なんだか…
ああ、そんなもんなんだ…って思った。
涙は出なかった。
「…笙子。」
「…ん?」
「…お腹空いた。何か食べよ。」
「…うん。行こう。」
笙子が組んでくれた腕が温かかった。
想さんの歓迎会に誘われたのはこの少し後の事。
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