4 過去の恋

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「…去年さ、想さんの歓迎会の少し前に、モールで先輩にあったでしょ?」 「…うん。今思い出しても腹立つわ。」 「ふふ…。あの時、涙は出なかったけどやっぱり落ち込んで…。先輩にあんな穏やかな顔をさせられなかった私が悪かったのかな、とか、色々ね。」 「…鈴さぁ、」 ハンドルを握る笙子が溜め息を吐く。 「あ、今はもうそんな事思ってないよ。…だけど、あの頃は、ね。自分の顔、特に目が大嫌いだった。」 それで想さんにあんな事言っちゃった私。 「へぇ、そんな話してたんだ。」 「うん、それで、多分気まずい顔した私に、想さんが笑って言ったんだ。…お互いに無い物ねだりですね、って。」 「…想さんが?」 「うん。ちょっと悲しそうな笑顔だった。でね、私…その夜、家に帰って、泣いたんだ。何故か分からないけど。」 「…すっきりした?」 「うん。だいぶね。無い物ねだりしても仕方ないなって。…終わった事だし、たかが恋が一つ上手くいかなかっただけだって。」 それから恋愛はまだする気にはなれなかったけど、先輩との事は吹っ切れた気がした。 取りあえず今頑張れる事、差し当たって仕事を頑張ってみようと思えた。 「想さんて、不思議なんだよね…。」 ・
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