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「今日は記憶の差し替え?…上書き、かな?してくれたし。」
「何それ?」
想さんはそんなつもり全く無かったと思うけど。
「先輩と付き合ってる時このメガネかけてたでしょ。気に入ってるから、また使おうと思ったけど…やっぱりちょっと不安だったんだ、かけるの。」
先輩がこのメガネをスッと外すのが、キスの、そしてその先の、合図になってたから。
今日、メガネの調整中に想さんの長い指が近付いて来た時、苦い思いが蘇りそうで思わず目を閉じた私。
「だけどね、メガネが外されて、目を開けたら、目の前に優しい目をして微笑む想さんの綺麗な顔があった。」
「それは…最強だね。」
笙子がクスっと笑う。
「でしょう?」
本当に不思議。
出逢った時から想さんは無意識のうちに、こんな風に私の気持ちをすくい上げてくれる。
「だから大事な人で、感謝してるって言ったのね…。」
笙子は頷きながら独り言のように呟いた。
「ねぇ、鈴。」
しばらく黙っていた笙子は聞きにくいだろう事をさらっと聞いてきた。
「あれから、男の人と、してないんでしょ?」
「…えっ? ちょ、ちょっと、笙子っ…」
慌てて後ろの席の様子を伺う私に笙子は笑って言った。
「大丈夫よ。順也さんはお酒飲んで車乗ると熟睡しちゃうから。」
ついでに「起こすのが大変なのよ」と愚痴をこぼす。
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