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「鈴も、想さんなら…」
「それは無いよ。」
笙子の言葉を遮る。
「想さんとは 今のままがいいから。」
もし私が想さんを男の人として意識したら、今の心地良い関係が崩れてしまいそうで、それは嫌…。もったいないよ…。
そんな私の勝手な思いを分かっているのか、笙子は何も言わなかった。
「っていうか、想さんは好きじゃないコとそういう事はしないよ、きっと。」
「…うん、それは私もそう思ってるけど。」
「それに私、そんなに焦ってもないんだ。…すごく好きな人が出来たら悩むかもしれないから、その時はまた相談に乗ってね。」
「…ん、分かった。」
私は指を組んだ手を上に伸びをして、大きく息を吐いた。
「まず今は仕事頑張るね。課長も変わった事だし。」
「あら、そうなの?どんな人?」
課長の姿を思い浮かべて言葉を探す。
「…いい人そう、かな。見た目も良いよ。」
「ふうん…。もうすぐ着くよ。」
「ん。」
私は膝の上に置いたバッグを持ち直しながら、そういえば課長の腕の中は嫌じゃなかったな…と、ふと思った。
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