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…あっ、いけない。
私は転がっていく思考を慌てて止めて、課長に向けたままだった視線を自分の手元に戻す。
「どうかした?」
「…いえ。」
「あ~、課長。気にしないで下さい。田上って、仕事の時以外はしょっちゅうボーっとしてるんですよ。」
…あんまりフォローになってないよ、北島。
「へぇ、そうなんだ?そんな風に見えないけど。」
課長が面白そうに私の顔を見ているから、
「…仕事はしっかりやりますので。」
取り敢えずそう返して、それではお先に、と席を立つ。
「はは、よろしく頼むよ。」
「俺も行くよ。」
北島が立ち上がると、課長の声が私たちにかけられた。
「あ、二人とも、さっきの会議で出てた販売計画書、遅れずに提出してください。」
仕事モードの声。
今それ言いますか?食べたばかりで胃が痛くなりそう…。
「はい。」
「わかりました。」
社食を出た北島は化粧室に寄ると言う私に「じゃあな」と手を上げて自分の持ち場に戻っていった。
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