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一気に階段を下りて、社員棟との連絡通路まで来て立ち止まる。
「はぁ…」
大きく息を吐く。
一瞬、忘れた北島との事。
だけど。
「あ。」
なんとなく見えにくくてメガネを外す。
「…指紋ついてた。」
北島のだろうか、それとも私の?
どうでもいい事考えながらメガネ用の布でキレイに拭き取ってからかけ直す。
うん。取りあえず着替えよう。
「電車、間に合うかな…」
「寒っ。」
急いで着替えて社員棟の門を出た私は思わず首を竦めた。
今日スカートじゃなくて良かった。
ホント、寒いから。ジーンズにブーツで良かった。
駅への道を歩きながら、考えるのは北島の事。
…何で?
だって今までそんな素振り無かった、よね?
私より四年遅れて入社してきて、最初は「先輩」なんて呼んでたくせに、歓迎会で同い年とわかったらすぐにタメ口。
気さくでオシャレな今時のイケメン。
仕事は真面目。
モテるし。
なのに、さっきのは何で?
そういう事なの?
わからないよ。
いきなり…。
多分俯き加減で歩いてた私。
何かにぶつかりそうになり「あっ」っと思った時、グッと腕を掴まれた。
「きゃっ…」
思わずビクッと力が入り飛び退きそうになる。
「…鈴さん?」
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