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「……」
「鈴さん。」
「あ、想さん…。」
「…ダメですよ、ちゃんと前見て歩かないと。」
私の腕を離した想さんの視線の先には私の来た方にフラフラ歩いていくサラリーマンらしき背中があった。
「…ごめんなさい。でも想さん、どうしてここに?」
見上げる私の目に映る想さんの苦笑。
あ、と横を見るとそこはシャッターが閉まったルックメガネがあった。
「コンビニに行こうと出てきたら鈴さんがボーっと歩いていたので…どうかしましたか?」
「あっ、ううん、何でも無いです。」
…北島はどうしてあんな風に思ったんだろう。
そんな思いでつい想さんを見つめてしまっていた私は慌てて目を逸らした。
「…駅まで送ります。」
「えっ、大丈夫ですから。」
「そうは見えませんよ。」
「……」
「電車何分ですか?」
電車の時間を答えながら腕時計を見る。
「あっ、あと3分しかないっ!」
「えっ」
思ったより時間が経っていて…もう、次でもいいかな、と思いかけた時。
「…走りましょう。」
「えっ」
「ほら…」
私の手を取った想さんが動き出して、私もつられて走り出す。
「えーっ?」
つい慌てた声を出すと、少し前を走る想さんが振り返ってニコッと笑った。
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