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走り出したルックメガネの前からはすでに駅が見えるけれど、間には信号二つに駅前の広いロータリーもある。
私の足だと3分はギリギリのところかもしれない。
今日は縛っていない想さんの柔らかそうな髪が揺れて靡くのを見て、
しっかりと繋がれた手を見て、
肩にかけたバッグがずり落ちないように気にしながらも、走った。
駅について離された手。
「…鈴さん、…入って。」
流石に想さんも少し息が苦しそう。
私が改札を通った時、ちょうど電車がホームに入ってきた。
…息が、…苦しい。
胸に手を当てながら、お礼を言おうと振り返ると、想さんはお財布からSuicaらしきカードを出して改札を抜けてきた。
「…?」
「間に合いましたね。」
そう言うと私の肩から背中にそっと腕を添えて促すと、電車が止まって開いたドアから車両に乗り込んだ。
車内はちらほら空席もあったが、一駅で降りる私たちは吊革に掴まって立っていた。
だんだん心拍数も元に戻ってきた私は、チラリと想さんの横顔を見上げる。
…何考えてるの、想さん。
「想さん?」
「はい。」
「あの、駅まで、って。」
「…隣の駅まで。」
「……」
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