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今日は何だかわからない事ばかり。
思わず出てしまったため息を想さんが拾う。
「…やっぱり何かあったんですか?」
声が落ちてくる。
「えっと…仕事で、ちょっと凹んでしまって。」
想さんの事を誤解して北島が…なんて言えない。
「でも、それはまた仕事を頑張ればいいコトなので大丈夫です。」
見上げて笑ってみせた私に、
「それならいいですけれど、歩く時には考え事に没頭せずにちゃんと前を見て下さいね。危なっかしくて心配ですから。」
と言う想さんは真面目な顔。
「…はい。」
シュンとした返事にふっと笑った想さんが急に「あっ」という表情をして、ジーンズのポケットからスマホを取り出す。
電話かな?と思っていると、画面を見て一瞬眉根を寄せた想さんは数回親指を動かしてまた元のポケットにしまった。
電源を切ったように見えた。
少し硬くなったような横顔はすぐにいつものおだやな表情に戻る。
「一駅だとすぐ降りるようですね。」
ずっと一定だった電車のリズムと音が少しずつ変わって段々と落とされる速度。
そして到着を知らせるアナウンスが流れた。
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