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化粧室に入って用を済ませて鏡の前に立つ。
もともとの薄化粧を軽く直して、頭の後ろで一つに結んだストレートの髪が乱れていないか確認。
外していたメガネをもう一度かけ直して出来上がり。
『そのメガネも似合ってるね』?
…貝塚課長、まだどんな人なのか掴めないけど、似合うって言葉はありがたく素直に受け取ろう。
その方が自分も相手も嬉しい筈、…単純な発想だけど。
さて、行くか。そう呟いた時、制服のポケットに入れていた携帯が震えた。
メール受信。
『ルックメガネ 藤野』
「あ、想さんだ。もう出来たのかな…」
『こんにちは。いつもありがとうございます。承っていたレンズ交換、明日には出来上がる予定です。お待たせして申し訳ありません。また連絡いたします。』
「相変わらずだなあ…。」
丁寧な日本語とのギャップがある想さんの容姿を思い浮かべて私はクスッと笑ってしまった。
「いやいや、しっかり日本人なんだけどね…」
それにしても以前使っていたお気に入りのフレームのメガネがまたかけられると思うと密かにテンションが上がり明日が待ち遠しい。
自分の持ち場に戻った私は、レジにいた後輩の菜々子ちゃんに声を掛けて売り場を見渡した。
老夫婦のお客様が目に入る。
「いらっしゃいませ。何かお手伝いする事はございますか?」
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