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一緒に電車を降りた想さんは改札を抜けると、当たり前のように「どっちですか?」 と私のアパートへの道を聞いてくる。
「あの、想さん。ここまでで…」
私が恐縮して言うのを笑顔で遮る。
「まだ帰りの電車来ませんから。」
…今日の想さんはちょっと強引で戸惑ってしまう。
「あ、じゃあ取りあえず真っ直ぐです。」
すぐ左に曲がって住宅街の中にある小さな児童公園の横を通る道もあるのだけれど、夜は人通りが少なくて怖いのでそっちを通るのは朝だけにしている。
歩き出した私に想さんが並ぶ。
コンビニに行くだけの筈だった想さんの服装は超ラフなもので、多分部屋着のフード付きのトレーナーとなんと下はジャージ、もちろんスポーツブランド物だけど。
それに黒のブルゾンを羽織って、スニーカーを履いて。
だけどそれもアリだと思わせる想さんは、電車の中でも女性の熱い視線を集めてた。
駅前通りをしばらく真っ直ぐ歩いて、左に折れて住宅街へ入りひとつ目の角を右に曲がると、私の住んでいるアパートがある。
その角で立ち止まる。
「…あのアパートなので、ここで。」
想さんの顔を見上げると、笑顔で頷いてくれた。
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