5 動き出す

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二階建て全8室の小さなアパートの私の部屋は201号室。 端だから隣が一部屋な分少し気楽だけど、階下への音にはそれなりに気を付けてる。 部屋に入ってすぐにお風呂のスイッチを入れた。 残業の途中で昼間買っておいたパンを食べたから、もう夕飯はいいとしよう。 ソファに座ってお風呂が沸くのを待つ間もいろいろな事が頭の中に浮かぶ。 問い掛けがあったわけじゃないから、今答えが必要な事でもない。 だけど。 私が気がつかないうちに何かが動き出してる気がして、心がざわざわしてる。 結局、お風呂に入っても、歯を磨いていても、ベッドの中で丸くなっても、今日の出来事が浮かんでは消えて、また浮かぶ。 私の手首を押さえつけた北島の強い力。 私の手を引いて走る想さんの軽やかな動き。 今まで知らなかった事。 まだ沢山あるのかもしれない。 北島の事も、想さんの事も。 あ、そういえば課長、展示会、一緒に行くって言ってたな。 …課長の事なんてもっと知らない。 考えるのに疲れて眠るまで、考えて… いつの間にか、朝が来て目が覚めた。 ・
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