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「みんな自分が幸せになりたくて、婚活でもなんでもしてるんですよ。何で先に相手の事考えてるんですか?」
「…うん。」
やっぱり引き摺ってるんだろうか。
あの日見た先輩と奥さんの幸せそうな穏やかな表情。
私が上手く愛せたら、あんな未来があったんだろうか。
考えこんでいる私に菜々子ちゃんは続ける。
「まず、鈴先輩が幸せになればいいんだと思います。相手が先輩を好きなら、それでその人も幸せになれるんじゃないですか?」
「…そんなものかな?」
「私はそんなものだと思ってますけど。」
へへ、っと笑った菜々子ちゃんに釣られて私も笑った。
「それに、鈴先輩はしたくない婚活とかしなくてもすぐそばにいいオトコがいるし。」
ニヤリとする菜々子ちゃん。
「もう一人、独身男性増えましたし。」
「え?」
「課長ですよ、貝塚秋生課長、37歳、独身、バツナシ。」
…そうなんだ。ホントに独身なんだ。…いや、でも。
「でも彼女いると思う。素敵だもん。」
あ、言っちゃった。
「ふふ。はい、素敵ですよね。なんで独身なのか不思議。ワケアリですかね?」
二人で首を傾げた。
「来週、課長と出張ですよね、展示会。」
「ん、火曜日。売場よろしくね。」
「はい。鈴先輩も頑張ってくださいね。」
またニヤリと笑う菜々子ちゃん。
私は、少し、気が重い。
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