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火曜日。まず都内に出るために乗った特急の車内。
課長は私を窓側の席に座らせて今日の予定などを軽く打ち合わせた。
その後は話も途切れて、ずっと窓の外を眺めていた私がふと通路側に目をやると、課長は腕を組んで目を閉じていた。
そっとバッグから携帯を出して時間を見ると、もうすぐ10時。
あと10分もしないで乗り換えの駅に着くから、横顔…少しだけ見ててもいいよね?
今日もすっきりと整えられた短めの黒髪。
ちょうどいい感じの広さの額に真っ直ぐな眉がとても男っぽいと思う。
今閉じられてる目は開けると切れ長で。
目尻の皺は年相応だろうか。
それほど高くはないけどすっと通った鼻筋。
唇は…。
「…もう着く?」
その唇が動いた。
そして開けられた目は少し眩しそうにまた細められた。
「あ、はい。もう少しです。」
貝塚課長は首をコキコキさせると、
「ごめん、昨夜ちょっと遅かったから眠くなった。」
と照れたように笑って私を見た。
「……」
見てたのバレてた?
「…お仕事ですか?」
「いや、DVD見てたらなかなか止められなくて。」
…意外。
そこに降りる駅のアナウンスが流れてきた。
「さて、行こうか。」
その言葉と共に表情が締まる。
「はい。」
私も切り替えよう。
うん、仕事だ。
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