6 雑踏

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特急を降りて乗り換え二回、向かったK社は渋谷区にあり、駅は原宿。 だが駅を出て左に行くので表参道とは違う方向だ。 K社に着くと、本店の五十嵐主任とバイヤーの風間さんが先に来ていて挨拶を交わす。 二人とも30代の女性。 五十嵐主任とは店舗間で商品を融通しあったりするので、電話ではよく話はしている。 「貝塚君も来たのね。」 「ああ、よろしく頼むよ。」 うちのデパートではまだ少ない女性バイヤーの風間さんと課長はなんと同期入社だと少し前に聞かされていた。 展示会場ではメーカーの担当者の商品コンセプトなどの説明を聞きながら、扱いたい商品をチェック。 最終決定はバイヤーの仕事だけれど、要望はきちんと伝えておく。 無事に仕事を終え、四人で昼食を取りながら話すのはやはり仕事中心だったのだけれど、五十嵐さんが席を外した時、風間さんが私に聞いてきた。 「貝塚君はどう?」 「え?あ、はい。すごく気配りがあって、頼りになる上司だと思います。」 「そうでしょうね」と風間さんは頷いたけれど、予想外の言葉を続けた。 「男としてはどう思う?」 ぶっ… 飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになる私。 それは課長も同じだったようで、咳き込みながら 「…風間っ、何言ってんだ。」 とうろたえた様子で風間さんを見て、そして私を見た。 ・
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