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「…まだわかりません。」
思わず出た言葉に自分でビックリした。
課長はちょっと目を見開いて何ともいえない顔をして、
風間さんは「アハハ」と笑った。
「そうよねぇ、まだ分からないわよね。」
と私に頷きながら課長に目線を移す。
「ただね、こんな私だって結婚してるのに貝塚君はその気配もないから、年頃の女性から見てどうなのよ?と思って。」
「…余計なお世話だろ。」
「そうなんだけど…、もうそろそろ、いいんじゃないかって、思ったのよ。」
「……」
友人である2人にしか分からないニュアンスを含んだ会話の傍で、顔がどんどん熱くなるのを止められない私。
なんか私の返事、変だったよね?
「素敵だと思います」なんて言えないから出た言葉だけど。
まだわからない、なんて。これからわかる、みたい。課長に興味があるように聞こえてたらどうしよう。
「ごめんなさいね、田上さん。変な事聞いて。」
「いいえ…」
その時ちょうど五十嵐さんが戻ってきたので、入れ替わりに私は席を立った。
「…私もちょっと失礼します。」
多分真っ赤な顔を隠して逃げるように化粧室へと向かう私の後ろで「どうしたんですか?」なんて五十嵐さんの声がしていた。
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