6 雑踏

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「さて、じゃ、行こうか。もうクリスマス一色だろうな。」 「…そうですね。」 「…どうかした?」 「あ、いえ。行きましょう。年々早くなりますよね。何日か前、ツリーの話題TVで見ました。」 「ああ、あそこのね。行ってみようか。」 「ですね。折角ですから。」 そうは言ってみたものの。 気が重い理由のもうひとつ。 課長の少し後ろを歩きながら、気付かれないように私は小さくため息をついた。 私は人混み…雑踏が苦手だ。 正確に言うと、雑踏の中を歩くのが苦手。 ひとりの時はまだいい。自分のペースで歩けるし自分の事だけ気を配ればいいから。 そして仲のいい友達や恋人、例えば笙子なら腕を組んで一緒に歩けるからいい。 一番困るのが、少し距離がある関係の人と歩かなくてはいけない時。 まさに今日、今、なんだけど。 邪魔にならないように、でもあまり離れないように、そして人にぶつからないように歩くのは難しい。 今日は平日だからと期待していたのに、何でこんなに人が多いんだろう? 街路樹が並ぶ真っ直ぐな大きな通りには行き交う車の列。 歩道には人の頭が一杯。 ここ歩くのか。 …今日、頭痛薬持ってたっけ? ・
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