1645人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて、じゃ、行こうか。もうクリスマス一色だろうな。」
「…そうですね。」
「…どうかした?」
「あ、いえ。行きましょう。年々早くなりますよね。何日か前、ツリーの話題TVで見ました。」
「ああ、あそこのね。行ってみようか。」
「ですね。折角ですから。」
そうは言ってみたものの。
気が重い理由のもうひとつ。
課長の少し後ろを歩きながら、気付かれないように私は小さくため息をついた。
私は人混み…雑踏が苦手だ。
正確に言うと、雑踏の中を歩くのが苦手。
ひとりの時はまだいい。自分のペースで歩けるし自分の事だけ気を配ればいいから。
そして仲のいい友達や恋人、例えば笙子なら腕を組んで一緒に歩けるからいい。
一番困るのが、少し距離がある関係の人と歩かなくてはいけない時。
まさに今日、今、なんだけど。
邪魔にならないように、でもあまり離れないように、そして人にぶつからないように歩くのは難しい。
今日は平日だからと期待していたのに、何でこんなに人が多いんだろう?
街路樹が並ぶ真っ直ぐな大きな通りには行き交う車の列。
歩道には人の頭が一杯。
ここ歩くのか。
…今日、頭痛薬持ってたっけ?
・
最初のコメントを投稿しよう!