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「えっと、」
課長が私の顔をじっと見ているから何だか焦って一気に喋る。
「あそこの小さい子、可愛いですよね、ああいう柄流行ってて…、つい見ちゃって。すみません、行きましょう。」
「…ああ。…田上、手。」
「はい?」
すっと握られた手を引かれて、勢いでふらりと歩き出す。
「え?」
「この方が歩きやすい。」
怒ったような課長の声。
「…ごめんなさい。」
絶対呆れられてる。
そう思うとカッと顔が熱くなる。
恥ずかしくて離れて歩こうとすると、もう一度グイッと手を引かれて隣に戻された。
「手を繋いだまま間開けると却って危ない。」
「…すみません。」
思わず首を竦めてしまった私に気付いたらしい課長がクスッと笑ったので、そっと横顔を盗み見る。
「別に怒ってないから。…それなりに照れくさいだけ。」
「すみま…」
「謝らなくていい。…こっち」
課長の手にぎゅっと力がはいって…なんだか泣きそうになる。
課長に促されて入った建物の中も大勢の人で混みあっていた。
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