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そんなコトでも考えていなければ、課長といる後数時間を乗り切れない気がする。
一度離した手はもう繋げないから、駅の雑踏の中、ただ課長を見失わないように、早足で歩いた。
まだ夕方早い時間の特急電車の車内は空いていて、また私が窓側で並んでシートに座る。
電車が動き始めてすぐ課長は目を瞑った。
…頭が痛い。
都内や人混みに出ると何故かいつも。
自動販売機で買った水で鎮痛剤を飲んで、小さく息を吐いた。
「…頭痛いのか?」
静かにしたつもりだったが、課長は目を開けて私の顔と水を持つ手元を見た。
「あ、大丈夫です。いつものコトなので。」
「常用は良くないぞ。」
「はい。それ程では。」
「そうか…。人混みは苦手そうだから気を使い過ぎるんだろう。」
「…はい。あの、今日はありがとうございました。私、鈍臭くて。」
「いや。悪かったな、その、勝手に…。」
課長はちょっと顔照れくさそうな表情をした
「いいえ。そんな事ないです。」
良かった、普通に話せてお礼も言えた。
と思ったのに。
課長が変えた話題はよりによって……
「…そういえば、北島と何かあったのか?」
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