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…私は何て答えれば?
「あんなに仲が良かったのに、最近一緒にいないし。」
「あ…、はい…。」
そっと様子をうかがうと課長は前を向いたまま。
「まあ、二人とも大人だから仕事に差し障りが出てるわけではないし。俺がどうこう言う事じゃないと思うけど。」
「……はい。」
「うん。…ただ、北島がね…」
課長の表情がふっと優しくなった気がした。
「本当に落ち込んでる。昨日も田上の方を見て、ため息ついてたよ。」
「……」
課長は北島の上司でもあり、同性の分、私より気心が知れて親しみがあるのだろうとは思う。
北島自身が人に好かれる本当に良いヤツだし。
課長が心配する気持ち、分かるけど。
…今、これ以上聞きたくない。
また、痛い。
胸が苦しくなる。
「それなりの理由があるとは思うけど。…田上、」
課長が私の顔を見た。
「北島の気持ちも…」
「分かりました。」
課長の言葉を遮るように被せた私の声は、硬く尖っていたと思う。
課長の驚いたような顔。
「…北島とは、そのうちちゃんと話そうと思ってました。」
「…ああ。」
「だけど、課長。」
ダメ、泣きそうだ。
「私には私の気持ちがあるんです。」
その時、課長がどんな顔をしたのかはわからない。
窓の方に顔を背けて、ギュッと目を瞑ってしまった私には。
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