6 雑踏

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「田上。どうだ?頭痛。」 電車がデパートのある駅に近づいた時、課長が声を掛けてきた。 「あ、はい。大丈夫です。」 眠れはしなかったが、薬も効いたようだし、とりあえず休めようと目を閉じていたのが良かったのか、頭痛は治まっていた。 「今日は直帰してもいいぞ。」 「いえ、まだ閉店時間前ですし、少しやりたい事もあるので。」 「…そうか?」 そして電車はゆっくりとホームに入っていった。 課長の後について改札を抜ける。 今日一日、この背中を沢山見た。 思いがけず知ったその手の温もり。 見た目よりゴツっとした手指。 ………。 この駅前の大通りをもう少し歩いたら、デパートに着いて、課長と2人の今日は終わるんだな。 そんな事を思いながら、ふと投げた視線の先。 課長の背中越しに見えた、ルックメガネのウィンドウからの明かりに照らされた二つの人影。 「あれ?鈴ちゃん。」 近づく私にかけられた店長の明るい声に、課長は足を止め、想さんは振り向いて私を見た。 ・
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