6 雑踏

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「…?」 ゆっくりと上げた視線の先に、今日は黒縁メガネを掛けた想さんの、私を見下ろす顔。 何か言いたげなその瞳が、少し酔っている時のそれに似ているように見えてドキッとした。 「そ、想さん、店長と二人で、外で何してたんですか?」 多分目が泳いでたと思う。 クスッと笑った想さんはルックメガネの店舗の方に顔を向けた。 「クリスマスのディスプレイをもう少ししようかって話してたんです。今週末、この通りのイルミネーションが始まるので。」 お店のウィンドウの中は赤と緑の小物などを使い、それと一緒にメガネが陳列されている。 可愛らしい雰囲気に、多分紗理奈ちゃんが飾ったのだろうな、と思う。 「イルミネーション、今週末からなんですね。楽しみ。」 歩道側に顔を向けて街路樹を目に、綺麗な光の列を想像する。 ここは県内では大きな商業地域なので、この時期から年末年始それなりの人出があって、もちろんイルミネーション目当てのカップルもたくさん。 「そうですね。」 一緒に街路樹を見ながらそう言う想さんの横顔は綺麗で… どこか寂しそう…? ・
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