6 雑踏

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そう思ったのはほんの一瞬。 「鈴さん。」 呼びかけて私を見た想さんの表情はいつものように穏やかで優しいもの。 「はい?」 「クリスマスはもう何か予定が入っていますか?」 「え?あ、いえ。多分、仕事なので、今のところは何も予定はないです。」 クリスマスは休みの希望者が多いから、多分ではなく絶対仕事だと思う。 そして多分予定も入らないと思う。 入るとしたら彼氏がいない友達との女子会かな…と浮かんだ苦笑いを慌てて抑える。 「…それなら、」 想さんが何か言いかけた時、 「田上。」 と私に呼びかける課長の声がその言葉を遮る形になった。 …想さんが小さくため息を吐く。 「はい。」 想さんの前から横に少しずれて課長を見た。 「どうする?戻るのか?」 「あ、はい。行きます。…じゃ、想さん、また。」 聞きそびれた言葉を気にしつつ、歩き出そうとした私の左肩に手を乗せた想さんが身を屈めてきたのに驚いて足が止まる。 「私用のメールしてもいいですか?」 耳に触れるような声にトクンと心臓が跳ね、私はただ小さく頷いた。 ・
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