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「……」
何も言えずに少しイタズラな笑顔の想さんを見上げて固まっている私に気付かず続く楽しそうな会話。
「お引き留めしてすみませんでした。」
「いえ。今度一度飲みに行きましょう。」
「いいですね。結構旨いもの出す店があるんですよ。」
「それは楽しみです。」
「じゃあ連絡先を…、鈴ちゃん。鈴ちゃん?」
「えっ、あ、はいっ。」
上擦った返事をした私に店長も課長も怪訝な顔をする。
「後で俺の連絡先、貝塚さんに教えておいてくれる?」
「あ、はい。」
「頼むね。…貝塚さんの都合がつく時に連絡ください。」
「はい、ありがとうございます。じゃ…行くか?田上。」
「はい。」
促されて歩き出しながら振り仰ぐと、想さんは私に微笑んだ後、課長に向かってお辞儀をした。
「失礼します。」
二人にお辞儀をして歩きだした課長を早足で追いかけてもう一度振り返ると、店長は笑顔で手を振り、想さんは静かに私と課長を見送っていた。
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