6 雑踏

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「…私も初めて会った時は驚きました。」 「彼とも、長いのか?」 「いえ、想さんが他の支店からここに来たのが一年ちょっと前なので。」 「想さん?」 「あ、すみません。藤野さん、みんなに名前で呼ばれてるので、つい。」 北島がこれで気を悪くしたのをすっかり忘れていた。 だけど、課長と北島は違う。 「そうか。」 今だってただそう頷いただけ。 「名前もカッコいいな。」 なんて笑ってる。 うん、…だよね。 そんな課長は赤信号で立ち止まると腕時計に目を落とした。 「田上、今日はもう制服に着替えなくていいぞ。」 「え?」 「営業時間あと30分だから。出張届出てるし。」 「あ、はい。」 交差点の先には私たちの職場。 「たまには表から入るか。」 信号が青に変わって、歩き出した課長の後を付いていくと、デパートの玄関の自動ドアを抜けて一階フロアへ。 …私服で表からなんて、なんだか久し振りで新鮮。 何気にお客様気分? 「ほら、行くぞ。」 なんとなくキョロキョロしている私を先にエスカレーターに乗せると、ふたつ下の段に乗った課長は、 「田上は面白いな。」 と言って笑った。 ・
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