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その日の午後7時、閉店のアナウンスが流れ、売場の片付けを済ませた私が事務所に入っていくと、課長とベビー用品の主任の高橋さんがパソコンを見ながら話をしていた。
高橋さんは勤続20年のベテランさんで、細かいベビー用品の事を知り尽くしている。
ただ出生率も低い現在は「大変だわ~」とよくボヤいてる。
「お疲れ様です。」
その後、来月の年末セールの事を三人で話している所に、北島が顔を覗かせた。
「あ、お疲れ様です。…田上、」
「あ、うん。もう少し…」
「あら、デート?」
高橋さんの面白がる声に慌てて「違いますよ」と否定する。
「じゃ、今日はこの辺で。」
私と北島の顔を見た課長が言うと、高橋さんも「そうですね」と頷いて、持っていたファイルを机に戻した。
「え?」
「北島、田上終わったから。」
何で課長が言うの?
「あ、はい。…田上、俺、車回しとくから。」
「あ、うん。」
北島が「お先に失礼します。」と挨拶をして出て行く。
「課長公認デート?」
高橋さんの声と一緒に課長を見た私の顔は少し不機嫌だったと思う。
「あ、いや。今日、北島に田上が定時に上がれるか聞かれたから…」
…そう、別にいいんだけど。
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