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北島の車の助手席に乗るのは久しぶり、と言ってもそれも数える程だけれど。
その内の一回があの夜だったな、とふと思い出す。
何か言いたそうにしている北島に、「食べてから聞いていい?」と提案して、後は専ら仕事や共通の友達の話などをしてやり過ごした。
お腹はちゃんと空いてたから、連れてきてくれた和食のお店のセットメニュー+αをしっかり戴いて。
デザートのあんみつとコーヒーを前に、しばらく黙っていた北島が口を開いた。
「ごめん。休憩室の事、本当に反省してる。」
テーブルにオデコが付きそうな位頭を下げながら。
「…うん。ちょっと怖かった、よ。」
「…ホント、ごめんっ!」
「うん。…分かった。もういいよ。」
私の言葉に顔を上げた北島は、ほっとしたような困ったような表情をしていた。
「ありがとう、田上。」
「うん。…私も悪かったのかも。」
「何で?」
「私、鈍感だった…?」
「あ~、まあ、な。でも悪いのは俺。」
そう言った北島は、真っ直ぐ私の目を見つめてきた。
「仕切り直し、させて欲しい。」
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