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「…それで田上がメールくれたし、今日も店予約してたから気を使って貰って助かったんだけど。」
そっか、あの個室予約してくれてたんだ…
もう一度食事の礼を言おうとした時にポツリ聞こえた北島の声。
「…解んないな。」
「え?、何?」
「いや、何でもない。」
一瞬私を見た北島は何か言いたげに見えたがすぐに前方に視線を戻した。
それからは何となく二人とも黙ったままで、車は私のアパートに着いた。
「…ありがと。」
カチッとシートベルトを外す。
運転席からも同じ音がする。
暖かい車内から出れば、外の空気は一層冷たく感じられるだろう。
それでも早く降りようと急く心。
「じゃ、また明日ね。」
ドアノブに手を掛ける。
「田上。」
「ん?」
顔だけを向けて北島を見る。
「好きだよ。」
ハンドルに右手を掛けて、真っ直ぐに見つめてくる瞳に捕まりそうで、目線が揺れる。
「……」
クスッと笑った北島が「おやすみ」と言って、私は車を降りた。
走り去る車のテールランプを見つめる私のバッグの中で、携帯電話が震えてメール着信を伝えた。
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