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女子高生は背中を向けているので、こちらに気づいていないが周りには俺以外に誰もいない。
見てみなかったふりをするか? でも次の朝ニュースで女子高生飛び降り……なんて記事を見ても後味が悪すぎる。一体どうするか? きっと彼女は人生に絶望しているのだろう、家庭問題か? それともいじめか? いずれにしろ俺のトークスキルでこれから命を絶とうとしている人間を説得できるのか? 無理だ。
ならば力技でいきなり背後から一気に歩道にまで引っ張り上げるか……却下、こんな俺の貧弱な体にそんなことはできない、最悪暴れられたら俺も一緒に転落するかもしれない。
とりあえずまずは俺の存在に気づいてもらおう、でも俺見知らぬ女子高生に声なんてかけたことないよ……それにいきなり声なんてかけてびっくりされて落ちたらまるで俺が殺したみたいじゃないか。どうする……そうだ!あたかも気づいてないふりをしつつ鼻歌でも歌いながら俺の存在を気づかせよう!
行くぞ……ガンバレの俺の歌唱力!
「ふ~ふんふふふん、ふふふ~ふふ~ん♪」
焦った俺の鼻から出た鼻歌は某猫型ロボットのテーマ曲だった……しかも音痴。
ああ、というか飛ぶこと煽ってどうするんだ俺。
恐る恐る女子高生の方を見るとこちらを不思議そうな顔で凝視していた。
「……ド〇えもん?」
よくあの音痴な鼻歌でわかったな、ありがとう。
「……」
お互いしばらく見つめ合い、沈黙。
なんだよ、なんか言えよ恥ずかしいだろ!
「音痴ですね」
「……」
こんなチャットみたいなやり取りしてたってしょうがないだろ……なんとか自殺を止めないと。
「そんなところに立っていると危ない」
「そうだね……待ってました、来てくれるの」
は? 待っていた? なにそれ怖い、この子俺が来るのをわかっていたのか? エスパー? 未来人?
訳がわからず頭の中はすでに真っ白になっていた。
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