【第一章】皇子と執事は空を舞う

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「トーキョーは下等な生物達が暮らす荒んだ町としか聞いておらぬが……とてもそうとは思えんな。 なかなか優美な光景じゃあないか、トーキョーとやら。 ただ、空がさみしいな……地上に負けてしまっているではないか」 彼は地上と空交互に眺めながら、残念そうにつぶやいた。 快晴にもかかわらず、広大な空には弱弱しい光を放つわずかな星しか見えない。 『東京』が発する強い光によってかき消されてしまっているのだ。 人間の文明の愚かさがひしひしと感じられる瞬間である。 彼はひやり冷たい空気を肺いっぱいに取り込み、ある言葉とともに吐き出した。
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