坤篇④:予言という確約と戸籍という盟約

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天皇も公安に引き取られ、キョウとヒノデは姿を消した。 片平が刀を構える。メイドは苛立ちながらも自分の死を受け入れた。その命を桜紅葉のために生かせるなら、十分である。 「待って!」 メイドの命を捨てさせまいと叫ぶ声が聞こえた。息を切らしながら駆けつけた女性がメイドの前に立つ。 片平はその女性にも刃を向ける。 「乱心か。」 メイドの前に相模美空が立っていた。唇を噛み締めながら恐怖に耐える彼女は息を吐き出すと共に口を開いた。 「貴方がしたいことは桜家の殺戮ですか!?それが国の意思なのですか!?」 聞く耳を持たない。片平が相模に斬りかかろうとしたとき、金定の体が吹き飛んできた。同時に、相模の前に沼野が立つ。 「あら、私いらなかった?」 沼野が相模の頭を撫でながら後ろを見た。拓真が拳を鳴らしながら片平を見ていた。 「そいつ、いらねえならこっちで処分するぜ。」 片平が黙って金定を肩に担ぐ。三駒は村雨達を連れて玄関を出ている。これ以上争う必要は無い。 「お前の首は、いずれもらう。」 「守り人一人捨て置けねえ奴に四大起源の首が取れるとは思えねえな。」 片平が桜家の屋敷から出て行く。目の前で見たのは、『透明な箱に包まれた村雨達』の姿だった。 「三駒!」 三駒が大きく口を開ける。桜家の屋根の上に立つ神庭時雨が個性を発動させる。 『ワープ』 瞬間、一つの箱が三駒に『呑み込まれる』。神庭はもう一つの箱だけを桜家の中に瞬間移動させた。 誰もいない部屋。箱が解除された土竜が隠れ場所を探した瞬間、『右手』が現れた。 伊立は三駒に呑み込まれた。彼の『胃袋』は時空が歪んでいる。神庭は個性を解除して姿を隠した。 公安が桜家から立ち去る。天皇とキョウ・ヒノデの三人が皇居に戻され、伊立が公安に連れ去られた。結果を見れば、拓真の惨敗である。 拓真が相模の肩に手を置きながら言う。 「美空ちゃん、来てくれてありがとう。終には内緒か?」 「ううん。『笠松さん』から許可が出たから。」 沼野が首を傾げる。 「こいつに味方していいって?」 「安居院天秤が亡くなったでしょ。だから…」 「ちょっと待て。…場所を移す。ここはもう安全じゃない。」 「ここより安全な場所なんてある?」 沼野がメイドを見ようとしたが、既にメイドは主人の下へと駆けていた。そのメイドが主人と梶本美咲と一緒に玄関へ戻ってきた。 「ミッちゃん久しぶり〜!」 沼野が美咲とハイタッチして飛び跳ねる。紅葉は俯いていた顔を上げて相模を見た。 「来てくれてありがとう。」 「いえ、そんな…いえ。どういたしまして。」 紅葉と相模が笑い合う。その間に澪を背負った神庭と、和渡・小柳・土竜の五人が玄関に集まった。 「これで全員か。」 「いいえ。黄道さんが古谷さんを見てくれています。古谷さんは致命傷こそ避けたものの、動ける状態ではなく…。」 小柳が目を伏せる。神庭は沼野に澪を託して古谷のいる部屋へ向かう。 「美咲ちゃん。隠れ家の一つでも紹介してくれないか?あいつら、準備が終われば今度こそ俺達を殺しに来る。」 「いいけど、そこもバレるんじゃない?」 「ここよりかはいいだろ。ここは場所自体はバレバレだからな。」 「あ、あの!」 拓真と美咲の会話に和渡が入る。和渡は震える両手を後ろに隠して胸を張った。 「私の力で、隠れ家を用意できます!」
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