雁真という少年と錐という少女

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斎藤は笠松を背負う。 「おい逃げるぞ!錐さんはまだ息がある!まだ助かる!」 大瀧は動かない。 「おい何やってんだよ!」 「匠、先に帰ってろ。」 「はぁ!?」 「こいつは俺がぶっ飛ばさねぇと気がすまねぇんだよ。」 大瀧の髪が逆立つ。 「ぶっ殺す!」 斎藤は大瀧から少し離れる。 (もうダメだ…。こいつがこうなったら何があってもあの野郎を倒すまで止まんねえ…。) 大瀧が小学生だった頃、飼っていた鳥に数人のヤンキー達が石を投げつけた事にキレて全員に全治2ヶ月の傷を負わせた。大瀧自身も自分がキレたら何をするか分からない。 「錐姉殺害の件で…」 「まだ死んでねぇよ!」 「錐姉殺害未遂の件でてめえをぶっ飛ばす。」 男は伸びをする。 「話は終わったか?言っているだろ、時間がないんだ。後ろの男は何も言われてないからな。野次馬はさっさと帰ってくれ。」 斎藤は歯を食いしばる。 「俺もやれる!」 「匠!」 大瀧は斎藤と笠松を見る。 「早く医者に見せねえと錐姉死んじゃうから。」 「…分かった。死ぬなよ。」 「この大瀧雁真は彼女できるまで死なねぇよ。」 斎藤は大瀧に背を向け、廃ビルを走り抜けた。 (すまねぇな、匠…。) 大瀧は正面を向く。 「さ~て、コート野郎。どうしてほしい?」 「そうだな…、串刺しだな。ただしお前が。」 男のコートから無数の針が飛んできた。 大瀧は針をよける。 「同じ手はくわねえよ!」 男は大瀧の右腕を指さす。 「まず右腕。」 大瀧が左に避けた時、何故か針が後ろから飛んできた。 「なにっ!」 針は大瀧の右腕に刺さる。 「ぐあっ!」 針は大瀧の右腕を抜け、向かいの壁に当たるまでに消えた。 (消えた…!?) 大瀧は転ぶことなく階段を駆け上り、上の階に向かう。 「鬼ごっこか、面白そうだ。」 男も二階に向かう。 大瀧は部屋の中に隠れる。 「やっべぇ、なんだよ今のはよ…。」 大瀧は自分の右腕を見る。所々に貫通している部分が見える。 「くそっ、これマジで死ぬぜ。」 大瀧は必死に今までの事を思い出す。笠松の言葉に引っ掛かる。 『超能力の類は信じる?』 「まさか、マジで超能力…?」
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