雁真という少年と錐という少女

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大瀧は一階の最も暗い場所に男を寝かす。 「錐姉が死んだら俺はてめえを殺すからな。」 大瀧がその場に座った時、向かいのガラス窓が割れる音がした。 「なんだ!?」 誰かが入って来る音だった。 「いや~、やっぱこうやって入って来るとカッケー!」 大瀧よりも少し年上の少年が入って来た。 男は大瀧に気付く。 「あり、もう終わった?」 そこに新たに三十半ばの男性が入って来る。 「田中、中の様子はどうだ?」 田中と呼ばれた男は振り返る。 「あー、もう終わったみたいだよ。なんか寝てる。」 「は?」 三十代であろう男は大瀧とコートの男を見る。 「お前、大瀧雁真か?」 「え、なんで知ってんの?」 男は田中の肩を叩く。 「先にあいつを捕まえるぞ。」 「了解。」 田中はコートの男に触れる。瞬間、コートの男は人形になった。 「なっ、人形!?」 「正確には蝋人形な~。」 田中はポシェットに蝋人形となったコートの男をしまう。 「遠藤、この少年はどうする?」 遠藤と呼ばれた男は大瀧の目の前まで歩き、座る。 「雁真君、どうやってあの男を倒した?あいつの能力はなかなか強かったと思うが。」 「能力…、多分、光を針に変えるってとこか?」 遠藤は頷く。 「その通りだ。」 コートの男の能力は光を針状(男のイメージでは矢)に変えるものだった。 斎藤が大瀧に追いついていなくても男が針を出せなくなったのは斎藤の影が大瀧の体を覆っていたからだ。 四方八方から針が飛んできたのは割れたガラスによって光の針が屈折や反射を繰り返した為。 光なので刺さらないものはなく、大瀧の持っていた鉄パイプでさえ、穴だらけにした。 男が焦っていたのは日が暮れ、光が無くなることを恐れていたからだ。 大瀧はそれを見抜き、鏡を置いてある可能性の高いトイレに入って自分が映る鏡に針を打たせた。 光の針は鏡に反射し、男の体を貫通した。光の針は光が届かなくなる所まで直線に動き、光が消えると無くなる為、物的証拠が一切残らない。 大瀧は遠藤を睨む。 「てめえらは味方か、敵か。どっちだ?」 遠藤は答えず、大瀧の右腕を見る。 「怪我どころじゃないな。田中。」 「アイアイサー。」 田中は蝋の膜を作り、大瀧の腕を包んだ。 「これで細菌は入らない。止血代わりにもなる。」
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