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あまりの出来事に大瀧は動けない。
遠藤は辺りを見回す。
「説明してくれるか。何が起きたのか。」
遠藤は大瀧に万年筆を渡す。
大瀧に書く意思が無いにも関わらず大瀧の手は万年筆を握り、床に線を引いた。
「はっ!?」
大瀧は恐怖で万年筆を手から落とす。
遠藤は万年筆を取り、線を触る。
「…なるほど、斎藤君と錐ちゃんも一緒にいたのか。まずいな。」
「なんで知ってんだよ!てか、錐がやべえんだよ!」
「いや、やばいのはこっちの方だ。恐らく既に完治してこっちに向かっているだろう。」
遠藤は苦い顔をして考える。
「よし、田中はここに残って斎藤君と錐ちゃんに説明しろ。雁真君は俺と一緒に逃げるぞ。」
「はっ、なんでだよ。見ず知らずのてめえなんかと誰が行くか。」
「大瀧雁真、15歳。大瀧詠一さんと島井歩美さんの息子。特技は喧嘩とゲーセンのUFOキャッチャー。中2の時に落ちてた宝くじが100万の当選くじだった為、歩美さんと半分ずつ分けて50万の貯金があり今も残っている。まだ話すか?」
大滝は遠藤の目が怖くなった。
「なんなんだよてめえは!」
「言っただろ、遠藤快(えんどう かい)だ。」
遠藤と大瀧が目を離さない中、廃ビルの入り口で足音がした。
「やばい、来た。」
遠藤は大瀧を担ぐ。
「おい離せって!」
「じゃあ田中。後は頼んだぞ。」
「アイアイサー。」
遠藤は大瀧を担いだまま全速力で廃ビルを走り抜けた。
数十秒後、笠松が大瀧達がいた場所に辿り着く。
「雁真ー!どこにいるのー!」
斎藤も追い付く。
「錐さん速いですよ。結構マジに疲れた…。ん?」
斎藤が田中を指さす。
「誰?」
笠松も田中に気付く。
「田中…さん?」
「あり、錐ちゃん?」
田中は笠松へと駆け出す。
「錐ちゃーん!」
笠松は冷静に田中をかわす。田中は盛大に転ぶ。
「錐ちゃんひどいよ~。」
笠松は斎藤の後ろに隠れる。
「なんで田中さんがいるんですか。」
「ちょっと仕事でね。あ、あの男は雁真君がやっつけたぜ。」
「え、雁真が!?」
斎藤はその場にへたり込む。
「何が起きてんのかさっぱり分かんねえよ…。」
「雁真君は遠藤が預かってっから大丈夫だぜ。」
「遠藤おじさんが!?」
「あ、やべ。」
笠松の目がこの上なく輝いた。
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