睡眠という概念と動作という時間

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放課後、大瀧と斎藤は気晴らしにゲームセンターに寄った。 帰る時には既に日は暮れ、夜になっていた。 「それじゃあな、匠~。」 大瀧は斎藤と別れて家に帰る。その途中、踏切の前で立ち止まる。 その時、電車が迫って来るのをぼうっと見つめる大瀧の背後に何者かが静かに歩いていった。 電車が大瀧の前を通る瞬間、大瀧はその何者かに背中を押された。 「うおっ!?」 大瀧は線路の上に自転車ごと倒れる。 「なにっ!?」 大瀧の耳元に電車が線路を走る耳慣れた音が迫ってきていた。 大瀧は電車にひかれる寸前に自分を押した人物を見た。 「え…!」 それは折咲千鶴だった。 電車が大瀧に迫る。 しかし大瀧は死ぬ寸前、折咲に手を振った。 「千鶴ちゃーん!」 折咲は驚く。とても死を知った者の行動ではなかった。 「え…」 電車が嫌な音を立て、大瀧を巻き込みながらその場を通過した。 電車が通過した後、折咲は踏切を渡る。 大瀧がいた場所には大瀧の死体らしき赤色の物体があった。 折咲はそれを拾う。 「…雁真君。」 折咲はその場で泣き出した。 「で、行きづらいんだけど。」 大瀧は折咲の後方二十メートル程で笠松と一緒に折咲の奇怪な行動を見ていた。 「あの子は何をしているの?」 「さぁ?」 今、大瀧は笠松の創った二つの能力で生き延びた。 一つは地面に穴を作る能力によってニ人の今いる位置と大瀧が倒れた踏切に穴を開け、くっつけた。 もう一つはダミーを創る能力で、折咲に大瀧が死んだ事を信じ込ませた。 大瀧はへらへらした様子で笠松を見る。 「いやー、錐がいて助かったー。サンキュー。」 「死にかけたのによく笑っていられるわよね。その能天気加減が尊敬できそう。」 「サンキュー。」 「褒めてない。で、どうするの。」 「んー、俺って案外Sなんだよね。」 大瀧は不敵な笑みを浮かべる。 「明日、何事も無かったかのように学校で会ってみる。」 「それは面白そうね。」 大瀧と笠松は自転車をひいて家に帰った。
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