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翌日、大瀧は誰よりも早く学校に来た。
頭の中で折咲の反応を予測する。
普通なら自分を殺した(未遂)人物を恨むのだが、大瀧雁真はそういう人物ではない。大瀧には好き嫌いはあるが、何かを『怨む』事がない。また、大瀧は喜怒哀楽の哀が著しく欠落している。簡単に言えば大瀧もまた異常者なのである。
時間が経って斎藤もやって来る。
斎藤はニヤツいている大瀧に怪訝な表情を浮かべる。
「なんでそんなに笑顔なんだよ。」
「千鶴ちゃんの反応が楽しみなんだよ。」
「は?」
大瀧は昨日起きた事を斎藤に話した。
斎藤は溜め息をつく。
「なんで早々に変なもんに巻き込まれてんだよ。」
「あれ、あんま驚いてなくね?」
「一周したわ。全てが一巡して逆に平気になったわ。」
「良かったなー。」
その時、折咲千鶴が教室に入る。
斎藤は何故か大瀧より緊張していた。
大瀧は笑顔で折咲に手を振る。
「千鶴ちゃーん!おっはよー!」
斎藤は冷静に折咲の反応を見つめた。
しかし二人の予想とは裏腹に折咲はいつも通り笑顔で応えた。
「おはよ、雁真君。」
折咲は何もなかったかのように席に座る。
大瀧と斎藤は拍子抜けした。
その後、笠松創先生が現れ、朝のSHRが始まった。
折咲千鶴に不審な点は見られなかった。
昼休み、大瀧と斎藤は笠松創に遠藤と話した事を伝える。
「快に会ったんだね。それで、何か不思議な事はあった?」
「殺されかけたぐらいだから特にそんな不思議な事はねえな。」
「なら良かった。心配はなさそうだ。」
二人の会話に思わず斎藤がツッコむ。
「いやおかしいだろ!本人が死にかけたって言ってるんすよ!?」
「え、だって今は元気なんだから関係ないよ。それで、誰に殺されかけた?」
「折咲千鶴っす。錐姉にも聞いて下さい。一緒にいたんで。」
大瀧の言葉に笠松創は首を傾げる。
「ちょっと待って。それって昨日の話?」
「そうっすよ。」
「おかしいな、僕は昨日の放課後、錐とずっといたよ。午後七時くらいからかな。」
大瀧が折咲に襲われたのは午後八時の事である。
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