睡眠という概念と動作という時間

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大瀧は頭を掻く。 「いや勿論頼み事は聞くけどさ、そもそも昨日のあれはなんだったんだよ。」 「気分を悪くしたら謝るけど、その時の事を全く覚えてないの。」 「は、え?」 「まず、私のその超能力みたいなものについて話すから聞いて。私は二人いるの。」 「二人?」 「今の私がいるんだけど、ある事が起きると私が殺人鬼になるの。」 「ある事って?」 「誰かがもう一人の私を調べた時。」 大瀧は折咲に超能力があるかどうか聞いた事を思い出す。 「へー、でも殺されないよう気を付ければいいんじゃね?」 「でももう一人の私にあった人は全員死んでるの。」 大瀧の額に汗が浮き出る。 「…今まで、何人?」 折咲は俯く。 「…二十人くらい。」 大瀧の顔から汗が流れ落ちた。 「マジで誰も?」 折咲は頷く。 大瀧の汗が止まらない。 「じゃあ昨日起きたのは?」 「あれは雁真君が見た夢なの。」 まさかの夢オチ。斎藤的中。 「その夢を見た人は翌日の日没から夜明けまでに私に殺される。」 「へ、へぇー…。それはなかなかヘビーだね…。」 「それで、何度も私は死のうとした。」 大瀧は折咲のその言葉を聞き、作り笑いをやめる。 「でも、死のうとする度にもう一人の私が止めちゃうの。自分じゃどうする事もできなくて…。」 「死のうとなんて考えんなよ。縁起悪ぃ。」 「え?」 大瀧は初めて折咲の前で笑みを消した。 「いいか、昔の人達は相手殺してでも生き延びてたんだぜ。人殺したから生きて、子供産んで、俺達が今ここにいんだよ。運命ってやつは屍の上に横たわってんだよ。んな簡単に死ぬなんて事はねえしそんなことする価値もねえ。二十人殺したんならそいつらの分まで生きりゃいいんだよ。怨まれても仕方ねえけどな。」 「…うん。」 「うし、それで…」 大瀧は半泣きで頭を抱える。 「マジでどうしよう…。」 あと三時間程で大瀧は死ぬ運命にあった。
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