睡眠という概念と動作という時間

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大瀧は折咲と共に『万屋』に行った。 万屋には遠藤快と陸舘颯がいた。 「なんだ、雁真君か。隣にいるのは?」 「折咲千鶴ちゃんっていいます。」 折咲は遠藤に軽くお辞儀する。 大瀧達は客間に行き、ソファに座る。 大瀧は昨夜の出来事と折咲について話す。折咲は終始俯いていた。 話を聞き終わった後、遠藤は深く椅子に座る。 「なるほど、ジャックか。発見が早くて助かる。そしてその話を聞く限りでは雁真君はあと三時間半程の命か。」 遠藤は両手を合わせる。 「ご愁傷様。」 大瀧は遠藤の頭を思い切り殴る。 「冗談言ってんじゃないっすよ。」 「すまない、本当に冗談だ。しかしマズいな。雁真君はまだ能力者ではない。死の予知は生身の人間が対応できる程甘くはないぞ。」 「それは分かってますよ。だからここに来たんじゃないっすか。どうにかならないっすかね。」 遠藤は考え込む。 「…厳しいな。いまいち詳細が掴めない。もう少し情報が必要だ。千鶴ちゃん。」 「はい。」 「俺の事を信用してくれるか。嘘はやめてくれ。」 遠藤の目は本気だった。 「…正直言って初対面の人にはちょっと。」 遠藤は薄く笑む。 「分かった、ありがとう。じゃあ基本は雁真君が動かなくてはな。それと千鶴ちゃん、幾つか質問に答えてくれ。」 「分かりました。」 「もう一人の君とは意思の疎通はとれるか?」 「できません。」 「会話もできない。」 「…はい。」 「じゃあ何故もう一人の君は人を殺すか分かるか。」 「分かりません。」 「つまり、千鶴ちゃんはもう一人の君について何も知らないんだな。」 「…すみません。」 「いや、それが分かっただけでも有り難い。ジャック…、その能力が最初に発現したのはいつか分かるか。」 「中学二年生の時です。」 「誰を殺したか、言えるか。」 部屋は尋問部屋のような雰囲気に変わっていた。 「遠藤さん、さすがにそれは厳しくないっすか。プライバシーの権利っつうもんがある筈っすよ。」 「ああ、何か強迫しているように感じたならすまなかった。」 「いえ、大丈夫です。」 折咲は息を大きく吸う。 「私は親友を殺しました。」
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