睡眠という概念と動作という時間

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折咲千鶴は中学時代、生涯最高とも言える親友がいた。 二人はいつどこでも一緒にいた。互いに悩みがあれば話し、愚痴をこぼし、共に笑いあった。 周囲からも仲の良い二人と見られていた。 中学二年の冬、親友は折咲の異変に気付く。 折咲の言動にしばし誤差が生じていたからだ。言っている事が昼夜で変わっていた。 親友は折咲の事を心配に思い、真剣に病院を勧め、折咲もそれに同意した。 しかし病院では特に異常はないと言われ、健康体と診断された。 折咲はその後も昼と夜とで性格そのものも変わるようになり始めた。 親友は夜の折咲を疑問視し始めた。 そういったある日、親友は折咲に絞め殺される夢を見た。 そして、折咲自身にも親友を絞め殺した感覚が残っていた。 その日折咲は恐くなり、家から出なかった。 その日の夜、折咲の親友は何者かに絞め殺され翌朝になって河原で発見された。 朝、折咲の爪と肉の間には真っ赤な物が付着していた。 それは親友の首の肉だった。 「それから担任の先生や警察にも相談しました。でも、皆…。」 「状況は飲み込めた。つまり、死を回避する方法は二十人とも見つけられなかったわけだな。」 「…そういう事です。」 「颯、どう思う。」 陸舘は首を傾げる。 「よく分かりませんが僕の能力を使えば大丈夫かな。」 「俺が心配してるのはそのもう一人の時間、もう一人は能力が効かない状態になるんじゃないかという事だ。」 「え?」 「現在、分かっているだけでもジャック保有者は一万人を越えている。その二十人の中に一人はいてもおかしくないかもしれない。特にこの地域は能力者が多いからな。」 大瀧はいよいよ死の制限時間を感じ始めた。 「…よし、千鶴ちゃんと雁真君は今日はこのままここにいろ。日没になったら二人にも協力してもらう。」 「協力ってどうやって?」 「千鶴ちゃんともう一人の千鶴ちゃんには和解してもらう。」
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